「乳鉢」と「乳棒」は薬剤師にとって必需品
薬局には粉薬を混ぜる際に使用する「乳鉢」と「乳棒」を置くよう定められています。
乳鉢・乳棒共に陶器でできており、理科の実験などで使ったものと変わりません。特に大きさの規定はありませんが、手のひらに乗るサイズの乳鉢と、それに見合ったサイズの乳棒がほとんどの薬局においてあります。
またそれ以外に、小さめのボウルくらいのサイズの大きな乳鉢がある場合もあります。
使用方法
乳鉢・乳棒は主に2種類以上の粉薬を混ぜる時に使用されます。
右利きの場合は左手に乳鉢を、左手に乳棒を持ち乳棒を回転させるのと同時に乳鉢を乳棒と反対向きに回して粉を混ぜます。一方向だけでなく、時々逆にして回します。このやり方で大体20~30回混ぜれば均一になります。混ぜ過ぎは逆に比重の違いによる粉薬の分離を招くので良くないとされます。
また乳鉢・乳棒を使用した粉薬の混合では、基本的に違う材質の粉薬は混ぜない方が良いとされています。粉薬と一口に言っても様々な種類があり、粒の大きさや特性から粉剤、顆粒剤、細粒剤、ドライシロップ剤に分けられます。
細粒と粉剤は一緒に混合することが可能ですが、他の剤形の粉薬は違う剤形の粉薬と混ぜても均一には混ざりません。そのような粉薬を混合する際は、乳鉢・乳棒で混合するのではなく分包機に撒く際、複数回に分ける必要があります。
剤形によって混ぜ方を変える
乳鉢・乳棒を使用した混ぜ方にも剤形によって違いがあります。
ドライシロップ剤などのつぶれやすい粉薬は、乳鉢をふんわり混ぜるように使ったり、時には、スパーテルと呼ばれる粉薬を量りとるスプーンのようなものでかき混ぜるように混合します。ドライシロップ剤などコーティングしてある粉薬を混ぜる際に潰してしまうとコーティングがはがれて苦味が出たり作用する時間が変わってしまう原因となります。
乳鉢・乳棒は粉薬の混合以外にも使います。よく使われるのは錠剤の粉砕です。錠剤を薬包紙と呼ばれる薄い紙で包んで乳鉢の中に入れ、真上から乳棒でゆっくり潰します。薬包紙で包まないと錠剤が飛び散ったり乳鉢にこびりついてしまいます。あまり勢いをつけて潰してしまうと薬包紙が破れて中の錠剤が出てきてしまうので注意が必要です。
また軟膏の混合は軟膏を混ぜる専用の板とヘラを使用して行われることが多いのですが、乳鉢・乳棒を使用する薬局もあります。軟膏を乳鉢の中で混ぜる場合、通常の陶器製の乳鉢ではこびりついた軟膏が落としにくくなるのでガラス製の乳鉢・乳棒を使用して混合します。
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