ジェネリック促進と国は言うが受け入れ環境が整っていない

   

厚生労働省は、2014年度のジェネリック医薬品使用促進の取り組み事例と効果などに関する調査報告書を発表しました。報告書は文献調査結果などを元に、ジェネリック医薬品の使用促進に対して先進的または有用な取り組みを行っている関係機関にヒアリング調査をする方法で行われており、4つの医療機関、3つの薬局、4つの保険者が調査対象となっています。

ヒアリング調査の結果から厚労省は、それぞれの機関について次のようなことがジェネリック医薬品の使用を促進する要因になるとまとめています。


●このページの目次


1.ジェネリック医薬品の使用促進するために

ジェネリック医薬品の使用促進するためにまず病院や診療所などの医療機関については、「変更する際に薬局から医療機関に問い合わせが必要な事項のうちいくつかを問い合わせ不要にする取り決めを薬局側と行うこと」、「ジェネリック医薬品についての勉強会を開催すること」が挙げられています。

問い合わせ不要の範囲拡大

問合せ不要の取り決めとはどのようなものかというと、現在先発品からジェネリック医薬品に変更する際、特定の条件下であれば錠剤からカプセル剤に変更するなどの剤形変更や、薬効成分の配合量が10mgのものを1錠から5mgを2錠出すなどの規格変更が、問い合わせをせずに薬局側の裁量で行うことが認められています。

しかし一定の条件を満たさなければ、規格変更や剤形変更の際に病院側に問い合わせて変更の許可を取らなければなりません。この問い合わせ不要の範囲を広げるよう医療機関と近隣の薬局が事前にいくつかの事項について取り決めを行い、本来であれば問い合わせが必要な規格変更や剤形変更について問い合わせをせずに薬局側が変更を行うことができるようにするということが問合せ不要の取決めです。問い合わせが不要になることによって、ジェネリック医薬品への変更がスムーズに行われると考えられます。

推奨品の選定と患者との信頼関係

次に薬局については、変更するジェネリック医薬品の推奨品を選定すること患者との信頼関係を築くことが挙げられています。

先発品の特許が切れて発売されるジェネリック医薬品は、非常に多くの会社が販売しています。1種類の先発品に対して数種類のジェネリック医薬品が存在するのも珍しくありません。ジェネリック医薬品の種類が多いと、薬局側の在庫数が増えてしまう原因になります。

また、薬局側に不足が出た場合には、調達するのに時間がかかってしまいます。そのため、チェーン店であれば推奨品を選定し、店舗間で在庫調整することができるようにすることが在庫管理などの点において有効です。

また地域間で推奨品を選定することで、個人薬局などがジェネリック医薬品への変更を考えた際にどのメーカーのものにすればよいのか選択するための基準にすることができます。

最後に企業の健保組合や国民健康保険の保険者である市町村については、医療機関など関係する団体と事前調整をしたり、複数の保険者感でシンポジウムなど共同での取り組みを行うこと、具体的な目標値を設定することなどが挙げられています。

2.ジェネリック医薬品を国が推奨する理由

ジェネリック医薬品を国が推奨する理由政府がなぜジェネリック医薬品を推奨するのかというと、医療費が近年増加傾向にあることと高齢化が進むにつれて、さらに医療費が増大する可能性が高いという理由が挙げられます。

実際に厚労省の発表によると、平成25年度の医療費(概算)は39兆3億円にのぼっており、ここ数年は2~3%の伸びが続いています。この中で注目すべきは75歳以上の医療費です。75歳以上の一人あたりの医療費は年間92.7万円で、75歳以下の一人あたりの年間医療費20.7万円の4倍以上になっています。

現在75歳以上の医療費が全体に占める割合は36%程度ですが、今後、団塊の世代がこの年令に入ってくることを考えると医療費のさらなる増加は必須と言えます。

医療費増加の現実を受けて先日発表された骨太の方針2015では、ジェネリック医薬品の数量シェアを2017年には70%以上に2020年末までのなるべく早い時期に80%とするという目標が発表されました。

ジェネリック医薬品については、2013年4月に後発医薬品の更なる使用促進のためのロードマップが発表され、平成30年3月末までに60%以上にするという目標が掲げられいました。この目標を受けて当時20%台であったジェネリック医薬品の割合が平成27年2月の時点では58.2%まで伸びており、目標達成はほぼ可能であると考えられます。

しかし他の先進国でのジェネリック医薬品の数量シェアはアメリカ91%、ドイツ82%、イギリス73%となっており、いずれも日本に比べて高水準となっています。公的保険制度がなく医療費のうち自費となる金額が非常に多くなるアメリカを除いてジェネリック医薬品の普及率が高い国々では、一般名処方と呼ばれる処方箋を商品名ではなく、成分名で書く方法が一般的になっている他、ジェネリック医薬品の使用を促進するよう法律でかなり厳しい制限を設けています。

今回の報告では、医療機関側が報告のような取り組みをしても、ジェネリック医薬品使用率を70%、80%にしていくのは難しいように感じます。一般名処方の導入などで日本におけるジェネリック医薬品普及率は飛躍的に高まりました。

しかしその後の改正では、一般名処方の処方箋を先発品で調剤をした場合には、そのたびにジェネリック医薬品にしなかった理由を記載するよう薬局側に義務付けるなど、ジェネリック医薬品の普及を医療機関側に丸投げしている感の強い政策しか取られていません。

3.ジェネリックにマイナスイメージを持つ患者・医者・薬剤師

ジェネリックにマイナスイメージを持つ患者・医者・薬剤師現状では、まだまだジェネリック医薬品に対して抵抗がある患者、導入に積極的ではない医師はいます。

薬局で患者の話を聞いていると、「ネットやメディアでジェネリック医薬品は効き目が弱いという記事を見た」とか、「前にジェネリックにした時に調子が悪くなったから先発品で出してほしい」という患者もいます。

どれだけ「薬効成分が同じこと」、「試験をして同等性が認められていること」を説明しても、「安かろう悪かろう」の考え方が根底にあることを感じずにはいられません。

医師にしても、いまだにジェネリック医薬品のことをゾロ、ゾロ薬、ゾロ品などと呼ぶ医師がいます。ゾロとは先発品の特許が切れた後にゾロゾロ出てくる薬という意味です。先発品の真似をしてゾロゾロ出てきたゾロ薬は、先発品に対して劣っているというイメージを持って使われることが多い言葉です。

そのような人たちの考えが、今回の報告のように、勉強会の開催や薬局への信頼が厚くなったところで変わっていくとはとても思えないのです。

また薬剤師の中でも、一部のジェネリック医薬品の使用を嫌がる人もいます。特に外用薬は使用感などに大きな違いが出るものもあるためです。

湿布の剥がしやすさが違っていたり、塗り薬では塗った感じがかなり違うことも多くあります。また点眼薬ではpHの違いから、さした時の刺激が違うということもあります。使用感の違いは患者からのクレームの対象になるため使用を嫌がるのです。

また今回の報告の中で長期処方の場合、ジェネリック医薬品をお試しで使ってもらえるように分割調剤を勧めていますが、実際には分割調剤にすることで金額が上がり、「薬局の勧めでジェネリック医薬品に変えてあげたのにどうして高いお金を払わなくてはいけないのだ」という患者もいるため、トラブルの原因になりやすいということもあり、あまり積極的ではない薬局が多数あります。

4.ジェネリックは経営を圧迫する可能性がある

ジェネリックは経営を圧迫する可能性があるさらに薬局に限っていいえば、ジェネリック医薬品が普及することで経営にプラスになることはあまりありません。ジェネリック医薬品に関わる加算として、「後発医薬品調剤体制加算」というものがあります。

数量シェアで55%、65%以上ジェネリック医薬品で調剤している薬局についてそれぞれ18点、22点を処方箋受付1回につき算定できるというものです。1点10円換算になるのでジェネリック医薬品での調剤が55%以上なら処方箋1枚につき180円、65%以上なら220円が薬局側に入ってくるということになります。これは全て先発品で調剤した処方箋についてもつく加算なので一般の人から見たらかなり儲かっているように感じるかもしれません。

しかし実際にはジェネリック医薬品を取り入れることによるマイナスというものが大きくあります。薬局の収入になる要素に「薬価差益」というものがあります。患者に薬を渡す際の金額は薬価という国で決められた公定価格で計算する必要があります。

薬価より安売りすることも水増しすることも認められていません。しかし薬の納入価は決められていません。納入価は薬局によって違い、薬価より割引されて入ってきます。この納入価と薬価との差額によって生まれる利益を薬価差益と呼びます。

卸から納入する際の納入価は多くの場合、メーカー別に何%引きという形で決まっています。このため同じ10%引きであれば薬価で1錠500円の先発品を100錠購入する場合には5000円の薬価差益が出ることになりますが、同成分でも1錠250円のジェネリック医薬品を100錠購入する場合には薬価差益は2500円となり先発品の場合の半分になってしまいます。

現実にはジェネリック医薬品メーカーの方が割引率が高いことが多いのですが、それでも先発品とジェネリック医薬品との薬価の差が大きければ大きいほど薬局にとっては不利益になってきます。

度重なる点数改正で、処方箋から得られる利益がどんどん減っている薬局にとって、薬価差益は収入の大きなポイントとなっています。そのため、ジェネリック医薬品の価格が低くなればなるほど痛手となってくるのです。

5.「国」との連携強化が必要

「国」との連携強化が必要薬局や病院側にとって「ジェネリック医薬品の導入が経営上のメリットとならない場合がある」ということは今回の報告でも触れられています。報告の中では「短期的な視点では確かに直接的なメリットとはならないかもしれないが、長期的にはジェネリック医薬品の使用を促進することは、国全体の医療保険財政に貢献することになるという点について、よりいっそう関係者に認識してもらうことが重要である。」と結ばれています。

また今回の報告は、現実に取り組んでいるケースを基本としているため現実的で参考になる点が非常に多いのですが、不完全に思える点も多々あります。

推奨品の設定についてはチェーン店の場合、報告のように推奨品を決めている会社が多くあります。これは不動在庫・期限切れによる廃棄薬剤の削減と不足薬の対応のために有効であるのと同時に納入価の交渉の際にも有利に働くためです。

今後、地域の基幹病院を中心とした小規模薬局での推奨品が設定されていくとチェーン店と小規模薬局間での差が出てくることが懸念されます。ジェネリック医薬品を扱う会社が乱立している現状を考えると他国のように国単位での推奨品の設定など何らかの対策が必要になると思われます。

6.ジェネリック医薬品率を高める体制はまだ整っていない

ジェネリック医薬品率を高める体制はまだ整っていないまた問合せ不要の取り決めについては、門前薬局とそれ以外の薬局にサービスの差を生んでしまうことが懸念されます。

ずいぶん以前から、かかりつけ薬局の推進が言われていますが、日本においてはまだまだ門前薬局が主となっています。そのため薬局でも門前の病院を中心とした品揃えとなり、かかりつけ薬局を作ろうとしても在庫が無いため、結局門前薬局に処方箋を持っていくという悪循環ができあがっています。

近隣の薬局と問合せ不要の取り決めをすることは、このような門前薬局主体の現状には即していますが、かかりつけ薬局を作ろうという面分業の動きには逆行するものとなります。

ジェネリック医薬品率を60%から80%まで上げるということは、今までのようなジェネリック医薬品に対する理解を深めることを中心とした方法では難しくなってきます。現実にジェネリック医薬品についての問題は、使用を渋る患者や医師たちの他にもたくさんあります。

経営上の理由や在庫の問題で薬局在庫が無いため、ジェネリックに変更していない場合をどのように減らしていくか、外用薬における使用感の違いなどの問題にどう対処していくか、すぐに発売中止や流通困難などになりやすく流通が不安定なジェネリック医薬品の安定供給に向けてどのような取り組みをしていくかといったことです。

また医薬品の特許は製剤だけではなく効果効用一つ一つにもあるため、ある効果効用は特許が切れているためジェネリック医薬品にも使えるが、同じ医薬品の違う効果効用は特許が切れていないため先発品では使えるが、ジェネリック医薬品では使えないというような問題もあります。

このような問題を解決しない限り80%までジェネリック医薬品率を高めるのは難しいでしょう。そのためには法整備を含めた環境整備が必要になってくると思われます。

今までのように、個人の負担が軽くなることを謳ったジェネリック医薬品変更推進では限界があります。実際に多少高くても安心感のある薬の方が良いという患者や安いのは質が悪いからだと思っている患者もいます。医療関係者による協力はもちろん必要ですが限界があります。

今後は医療保険料の増加という現実と、国民皆保険制度を守るためのジェネリック医薬品推奨であることに対する認識を深め、医療関係者だけではなく薬を使用服用する全ての人に協力を求める必要があるのではないでしょうか。そして協力を求めるためには様々な問題をクリアし、ジェネリック医薬品を安心して皆が使用できるような環境整備を早急に進めていくことが重要であると思います。

       

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