次期調剤報酬改定の議論から見る薬局の現状

   

保険診療に関わる値段は「薬価」と呼ばれる薬の値段をはじめ、技術料やサービス料まで全て厚生労働省によって決められています。この保険診療に関わる値段を「診療報酬」といい、1点10円の点数制で計算されています。また診療報酬は2年に1度改定が行われます。

改定は厚生労働大臣が中央社会保険医療協議会の議論を踏まえ決定します。前回は平成26年4月に診療報酬改定が行われたので、次回の改定は平成28年4月に行われます。

今回は、その平成28年度の改定に向けて、中央社会保険医療協議会で薬局の調剤に関わる診療報酬についての議論が7月22日からスタートしました。

※ 4月からの調剤報酬改定に伴い

今回の改定により多くの薬局が打撃を受けることでしょう。私の耳にも複数の門前が潰れると言った話が来ています。そうなれば現在は人手不足と言われる薬剤師ですが、今度は人手が余ってしまう可能性があります。

人手不足だからこそ、転職したときに好条件で採用してもらえるわけですが、人が余ってしまっては、そうもいかなくなってしまう可能性があります。

「転職を少しでも考えている方」「勤めている会社の経営に少しでも不安がある方」は、早いうちに本格的に動いた方が良いかもしれません。

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点数稼ぎになっている薬局業務を批判した内容

点数稼ぎになっている薬局業務を批判した内容今回の議論では、現在の医薬分業のあり方について医師側支払側双方から厳しい意見が出ました。

医師側からは、「医薬分業に伴う患者負担の増大や、院内処方と院外処方の点数格差」についての指摘、支払側からは「医薬分業に伴う医療費の増加がある一方で、それに見合った効果が出ていないこと」などが指摘されました。

双方とも、門前薬局が主流になってしまっている院外薬局の現状や、お薬手帳や薬歴管理など本来の目的を果たさず点数稼ぎに過ぎなくなっている薬局業務について批判した内容となっています。

これらの反省点を踏まえ、今後は複数の医療機関の処方箋を決まった薬局で受け付ける他、在宅医療やOTC、健康相談なども受け付ける『かかりつけ薬局を推進していく』としています。かかりつけ薬局の推進により服用している薬の一元的・継続的な管理を薬局が行えるようにし、現在問題となっている残薬問題を解消し患者に医薬分業のメリットを実感できるような薬局サービスを展開するとしています。

診療報酬の改定まではまだ時間がかかりそう

診療報酬の改定まではまだ時間がかかりそうこのニュースを聞いて、次回の診療報酬改定は厳しいものになりそうだと思った薬剤師が多いことでしょう。基本的な流れは目新しいものではありません。

在宅医療に薬剤師が関わっていくべきだという議論と在宅医療を推進する点数は前回の改定から行われていますし、かかりつけ薬局の推進自体はもう何年も前から言われていることです。

在宅医療については、前回の改定でかなり多くの薬局が参画するようになったと感じます。今後もこの動きは進んでいくと考えられ、今以上に高齢者施設に薬局が関与したり高齢者を介護している自宅に薬剤師が訪問することも多くなっていくでしょう。薬局の業務は増えますが在宅医療に関しては今後推進されることを考慮して対策している薬局も多いように思います。

「かかりつけ薬局」の推進はあまり進んでいないのが現状

「かかりつけ薬局」の推進はあまり進んでいないのが現状しかし、かかりつけ薬局についてはほとんど進んでいないのが現状です。そのため、門前薬局についての規制が厳しくなることは、程度によりますが多くの薬局が影響を受けるものと思われます。

門前薬局が主流になっており、かかりつけ薬局を持つ面分業が進まないのにはいくつかの理由があります。

薬局在庫の問題

まず「薬局在庫の問題」です。

結局、自宅近くの薬局に行っても在庫がないということは非常に多くあります。特にかかりつけ薬局推進を謳って作られたドラッグストア併設の調剤薬局では規模が小さいため、不足薬が出ることもしばしばあります。

そうなってしまった場合、患者は全ての薬を揃えている門前薬局に行ってしまうのです。この在庫管理の難しさが門前薬局がはびこっている一番の原因であると考えられます。しかし今のところこの問題を解決する有効な手段は見つからないように感じます。

チェーン店における店舗異動の多さの問題

次に考えられる問題としては、チェーン店における店舗異動の多さの問題です。

病院の場合、特定の医師に診てもらうためにかかりつけの病院に行く患者がたくさんいます。開業医の場合は、先生が転勤などで異動することはありませんし、大病院の場合は最近だと様態が安定すると近所の病院に移されるケースが多くなっていますし、大病院の先生が開業すると患者もついていくというのもよくあることです。

しかしチェーン展開している薬局の場合はかなりの頻度で店舗異動があり、患者が慣れ親しんだ頃にその薬剤師がいなくなってしまいます。常に新しい薬剤師ばかりというのは薬局に対する愛着がわかない原因となります。一方で薬剤師にとってはたくさんの店舗や複数の科を経験したほうがスキルアップにつながるという側面も持っています。

院外処方より院内処方の方が良いとの意見もあるが

院外処方より院内処方の方が良いとの意見もあるが今回の議論の中で、医師側からは「院外処方より院内処方の方が良かったという患者の声を多く聞く」という意見が出たようですが、現状を考えると患者側から見たら当たり前かもしれません。

現在では先程のような様々な問題があるため、門前薬局が主流になっています。門前薬局など患者側からしたら病院内にあった薬局が外に出たようなものです。

さらに今まで院内薬局では、病状も何も話すことなく薬の一般的な説明だけであっさり薬を渡されたものが、院外薬局だと病院で話してきたのと同じ病状を根掘り葉掘り聞かれ、さらに新規だとまた問診票を書かされ、薬の変更があれば病院に電話するからと待たされるし、挙句の果てに薬が足りないこともあります。しかも金額が院内でもらうより高くなるのですから、良いことなんて少しもないように感じるかもしれません。

でも実は中身はずいぶん違うのです

院内薬局の不安要素

院内薬局の不安要素院内薬局では、処方で不明点がある場合、薬剤師は通常、事務方に連絡してカルテを回してもらいます。そしてカルテを見て判断し、疑義があればそれぞれの科に連絡を取ります。

患者の話は医師に話したことが全てであり、薬局では詳しい話を聞かずに薬を渡します。

調剤薬局では、患者から聞いた話などを薬歴として経時的に記載していますが、院内にはありません。患者の併用薬、残薬などは医師に話したことが全てです。話し忘れていたらそれで終了です。

ちょっとしたことかもしれませんが、場合によっては大きな事故につながる不安要素でもあります。

少なからず便利さを感じている人もいる

少なからず便利さを感じている人もいる現場では数は多くありませんが、薬局があってよかったという声もあります。実際に私が院内処方から院外処方に切り替えた病院の門前薬局の立ち上げに関わったことがあるのですが、その時に院内の方が楽で良かったという声がある一方、「先生は忙しくて話したいことが話せないから薬局ができてよかった」と言っていただいたことがあります。

その時に医師に問い合わせして処方変更をした患者から「ありがとう」と言ってもらったことは今でも忘れません。こういう形で薬局がもっと患者の役に立っていければ良いのだろうと思います。

解決策は色々あるのでは?

解決策は色々あるのでは?院内薬局と院外薬局の違いに話を戻すと、院外薬局の場合はカルテを見ることができません。

薬剤師は処方内容と患者の話から全ての情報を得ます。患者が根掘り葉掘り聞かれるのが手間になると言うのであれば、カルテを薬局側が見ることができるようにすればよいのです。

また病院で書いた問診票はもちろん薬局側には回ってこないので、同じことであっても新規患者から聞き出す必要があります。それを簡略化するのであれば医療機関全体で一つの問診票にして、カルテ同様その情報を共有できるようにすればよいのです。

さらに保険証は病院で出したので出したくないという患者が時々います。保険証については、処方箋に保険番号などの記載はありますが、間違っている場合もあるので、レセプト請求が病院とは別である薬局は、病院とは別に保険証を確認する必要があります。患者の手間を省くには、保険証をデジタル化するなどして、人の手による入力を経由しない形で医療機関で共有する、または医療費を後から行政で払い戻す形にしてしまって、医療機関での保険証の提示自体必要ないものにするなど何らかの方法を考えればよいのではないでしょうか。

できることから解決すべき

できることから解決すべきこのような環境整備は、個人情報保護の問題やセキュリティの問題もあるため簡単には実現できないのでしょうが、議論されているような薬局側の問題は環境整備によって解決可能なものもあるのではないかと思います。

今回の議論でもICT技術の活用が議論されています。薬局も含めた医療機関での情報共有が進むことで患者負担が減っていくと思われます。お薬手帳や薬歴が形だけのものになっているという意見については全て同感というわけではありませんが分かるところもあります。

前回の改定で、お薬手帳を渡さない場合の点数が復活して少し改善されているようにも思いますが、まだまだお薬手帳を渡すことによって得られる7点、金額にすると70円のためだけに薄っぺらな手帳を渡している薬局もあります。

お薬手帳は医師や薬剤師にとって貴重な情報源です。しかしあまり医療機関にかからない若者など一部の患者にとっては、そのメリットが実感できないただの面倒な冊子です。TVやSNSから「手帳を断れば薬代が安くなるから」という情報を得て薬局で断る人もいます。

しかし実際には、手帳が無いため併用薬が分からず困るといったことがどの薬局でも頻繁にあります。手帳を断られるのは薬剤師が手帳の重要性をきちんと啓蒙しないためだと言われますが、本当にそれだけでしょうか。

お薬手帳のアプリ化

お薬手帳のアプリ化お薬手帳は最近アプリが出されるなどデジタル化が進んでいます。本来であればこれは薬局にとって大きなチャンスです。

アプリであれサイトであれ、デジタル化されることによって持ってくるのを忘れた、薬局に来るたびに持ってくるのは面倒と言った声に答えることができるからです。ただ残念なことはチェーン店や薬剤師会などが独自にアプリを開発し、系列が違っていたり市町村が違っていたりすると対応していないのです。これではお薬手帳の意味が半減してしまいます。

今年の4月にようやく厚労省が全国共通のお薬手帳アプリの構想を出したようですが、まだ実現に至っていません。このお薬手帳アプリの開発からも見られるように、調剤薬局はそれぞれが独自の対応や対策をしているため、なかなか全体として大きな改革というものができていません。

商売敵なので仕方ないのかもしれませんが、病院薬剤師が以前は無理だと言われてきた病棟業務を実現してきたことなどを見ると、もう少し調剤薬局もまとまって改革を成し遂げられれば良いのにという気もします。

薬歴未記載を改善するために

薬歴未記載を改善するために薬歴については、以前に41万件の薬歴未記載がある調剤チェーン店で問題となりましたが、数に違いはあれ、未記載の薬歴というものはどの薬局にも多少はあります。

薬歴の内容については薬の服用と指導内容の経過を残すという本来の目的を果たしている薬歴もありますが、そうでないものもあります。そしてガイドラインに沿った薬歴内容というものが重要視されすぎていて、薬剤師にとってこなすだけの仕事になっているのも事実です。

薬歴が単にこなすだけの作業で無意識に仕事としての重要度・優先度が下がってしまっていることが、薬歴未記載につながっているのではないでしょうか。

薬歴導入から数年は、看護師にならってSOAP(ソープ)形式という系列立てた記載方法が導入されるなど様々な模索がされてきましたが、最近では保健所対策に奔走している傾向があるのも残念なところです。薬歴に残さないといけないから必要事項を確認する服薬指導は新人の頃だけで良いはずです。

薬歴ありきの服薬指導ではなく、きちんと患者に向き合った服薬指導の結果として、しっかりした薬歴が残されるのが理想なのだと思います。そうすれば患者の情報を記録・共有する薬歴の重要度が上がり、未記載が減っていくはずです。

ではきちんと患者に向き合った服薬指導はどうしたら良いのかと考えると、やはり電子カルテの開示などによって、「薬剤師が服薬指導に必要な情報をしっかり得られること、日々の作業に忙殺されて服薬指導に十分な時間をかけられない状況を打破することが必要」だと思われます。

条件重視の薬剤師と内容重視の薬剤師

条件重視の薬剤師と内容重視の薬剤師しかし一方で、現在の状況に甘んじている薬剤師もいます。給料などの条件だけを求めて転職を繰り返す薬剤師、きちんと患者の話も聞かず薬を渡している薬剤師、専門家としての自覚もなく軽はずみな服薬指導をして医師に迷惑をかける薬剤師などの存在です。

もっと専門性の高いこと、薬剤師としての能力を発揮したいと思っている人は、病院薬剤師に転職する傾向にあります。新卒にしても調剤薬局にポジティブな考え方を持って入ってくる人は少数派です。「病院より給料が良いから」「ドラッグストアより専門性がありそうだから」「日曜が休みだから」など、多くの薬剤師が条件面か他種との比較で調剤薬局を選択しているように感じます。

もちろん中には、調剤薬局の薬剤師に夢を持って入ってくる人もいます。しかし多くの場合、日々の雑務に追われて専門性を発揮できないことを嘆き、病院薬剤師への転職を希望したり、あっという間に薬局長、マネージャーになっていってしまい、薬剤師の職責を考える前に会社からの様々な要望に応えることや毎日の仕事に忙殺されてしまうのです。

薬剤師の地位を高めることが今後大切になる

薬剤師の地位を高めることが今後大切になるこのように、調剤薬局に勤務する薬剤師における個々の問題や、なかなか協調できない企業・自治体間の問題もあり、調剤薬局の役割や薬剤師の必要性は医師会側などから非難されることが多いように思います。

しかし結局のところ大きな改革やシステムの改善を調剤薬局の薬剤師側から提案することは少なく、医師会や支払側、厚労省などに任せっきりになっているように感じます。

今のままの状況では、厚労省が提示するような医薬分業の形は不可能でしょう。それは現場で働いている薬剤師が一番良くわかっていることです。しかしどうしたら目標とする姿に近づけることができるのか、考察する余地はまだあるように思います。

医療現場においても薬剤師の地位は低いこと、調剤薬局にはチェーン店や個人薬局など、数ある中で全体を率いるような大きな企業や団体がないことなどから、薬剤師側が意見をいうのは難しいのかもしれません。

しかし、これからは医師側や厚労省側に任せっぱなしの医療制度改革ではなく、現状に則した意見を薬剤師側からももっと出していく必要があると思います。病院側も巻き込んだ変革を薬剤師側からも行い、患者や医師、その他医療関係者を納得させられるような仕事をしていかないと、日本の薬剤師は今以上に必要のないものと言われてしまうことでしょう。

       

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